はじめに
私は現在36歳で、第4子を妊娠中です(2019年7月現在)。
今回の妊娠で健診を受けた際に、サラ~っとですが、出生前診断の話を聞きました。
「出生前診断は受けることが出来る週数が決まっているので、受けようと思っているのなら、早めに言ってください。」
というような内容で。
私は出生前診断は受けるつもりがなかったので病院では詳しい話は聞きませんでしたが、『高齢出産』や『出生前診断』については知りたいと思うことがありました。
今回は、高齢出産のリスク・出生前診断についてまとめていきます。
高齢出産とは
定義
日本産婦人科学会によると、35歳以上の初産婦(初めて妊娠・出産をする女性のこと)を高齢出産(高年初産)と定義しています。
1993年以前は30歳以上となっていたのですが、30歳以上の初産婦が増えたこと、WHOをはじめとする諸外国でも同様の定義がされていたため、1991年頃から35歳に引き上げられました。

私は36歳ですが、経産婦(2人目以降の出産)です。
上記のように、日本産婦人科学会が定義しているのは36歳以上の「初産」。
国際産婦人科連合でも、高齢出産の定義は「初産婦が35歳以上、経産婦では40歳以上」としています。
なので、経産婦の場合、35歳を超えていても必ずしも高齢出産とはいわないということになります。
リスク
高齢出産の場合、様々なリスクがあると言われています。
流産
流産の確率は、お母さんのライフスタイルや行動によって起こるものではなく、卵子の老化、卵子の染色体異常、卵子の生命力低下が原因で上がります。
そのため、流産の確率は年齢とともに上がるといわれています。
データは以下のようになっています。
35歳 ➤ 25%
40歳 ➤ 40%
50歳 ➤ 50%
子どもに障がいがでる
どの障がいがでるかの確率は不明ですが、一例として21トリソミー(ダウン症)についての数字は以下のようになっています。
27歳 ➤ 931分の1
33歳 ➤ 443分の1
37歳 ➤ 187分の1
45歳 ➤ 23分の1
妊娠中の病気が発症しやすい
妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などは、年齢が上がると発症する確率が高まります。
年齢を重ねることで血管の弾力性が落ちることに加え、妊娠中は血液量の増加や子宮が大きくなったことで腎臓への負担が増すことが原因であると考えられます。
難産になりやすい
年齢を重ねると、子宮口の弾力も失われていきます。
そのため出産時に陣痛が弱くなり、お産が長引いてしまうことがあります。
出産に時間がかかると、母子ともに体力が低下し、医療処置でのサポートが必要になったり、帝王切開になることもあります。
また、産後の身体の回復も、若い頃に比べると時間がかかるようになります。
出生前診断とは
お腹の赤ちゃんの病気や形態異常、染色体異常を調べるために行う検査・診断のことをいいます。
出生前検査の一般的な例として、以下のようなものがあります。
超音波検査
超音波(エコー)検査は、ほとんどの産婦人科で、お腹の赤ちゃんの心拍や姿勢(逆子かどうか)を確認したり、大きさを測って順調に育っているかどうかを確認するために、妊婦健診の中で行われています。
また、赤ちゃんの病気や形態異常をチェックするという目的もあります。

私がかかっている総合病院でも、毎回超音波検査はありますが、妊娠中期と後期に胎児超音波スクリーニング検査(詳しい超音波検査)が実施されています。
超音波装置は年々飛躍的に進歩していて、立体的な赤ちゃんの画像を見られるようになったり(3D4Dエコー)、赤ちゃんの断面を高い解像度で写し出したりすることもできるようになっています。
これによって、以前は見つからなかったような赤ちゃんの病気の兆候や形態異常も見つけられるようになりました。
費用は大体1~2万円となっています。
わかること
超音波検査では、赤ちゃんのむくみ、頭蓋骨の欠損、尿道閉鎖、障がい(13・18・21トリソミー)の確率、全身のさまざまな形態異常などを知ることが出来ますが、すべての施設でこれらが分かるわけではありません。
施設の方針や、医師の専門性の違いによって、わかることは大きく異なります。
超音波の専門的な技術を持った医師のいる施設では、妊娠初期から、全身の形態や脳・心臓・臍帯・膀胱・四肢などの構造や血流の状態をくわしく調べることができるため、小さな異常もわかる場合があります。
超音波検査の際に赤ちゃんの首の後ろ(うなじ部分)に厚くなっている部分が見えることがありますが、これを後頸部皮下浮腫またはNTと呼びます。
NTは正常な赤ちゃんでも妊娠初期には程度の差はあるものの見られますが、血液やリンパ液の循環が悪くなり、首の後ろに異常に多くたまって厚くなることがあると考えられています。
大半は週数が進むにつれて自然に消えていきますが、そうでない場合は、染色体異常や先天的な心臓病などが原因であることも考えられます。
一般に、NTが厚くなればなるほど、染色体の異常や心臓病などの確率が上がるとされています。
しかし、このNTは赤ちゃんが一定の体勢をとっているときに真正面から超音波を当てないと正確に計測することができないので、実際より厚く見えてしまうこともあります。
正確に測るには、多くの時間と高い技術が必要で、すべての産婦人科医にできるわけではありません。
さらに、このむくみは自然に消えていくことも多いので、医師から「首のうしろにむくみがある」と言われただけで、お腹の赤ちゃんの異常があると判断してはいけません。
不安な場合は、超音波検査の専門技術を持った医師に相談することを考えてみてもいいかもしれません。
日本超音波医学会のホームページには、超音波検査の専門医の一覧があります。
検査方法
プローブという、超音波を出したり受けたりするものを妊婦さんの腹部に当てたり、膣内に挿入したりして、赤ちゃんの状態を確認します。
うまく超音波が当たる位置に赤ちゃんがいないと観察できないため、時間がかかることもあります。
検査のリスクと限界
超音波を当てるだけなので、検査による流産の危険はありません。
この検査では、お腹の赤ちゃんに形態異常があるかないかを確認することはできますが、臓器が正常に機能しているかどうかを正確に診断することは難しいとされています。
加えて、子宮の向きや子宮筋腫の合併、妊婦さんの肥満などのために超音波が届きにくい場合や、羊水の状態、赤ちゃんの位置によっては、診断が難しいことがあります。
羊水検査
お腹の赤ちゃんは羊水に包まれていますが、その羊水には赤ちゃんの細胞が含まれています。
羊水検査とは、その羊水を採り、それらの細胞を回収して、染色体異常を調べる検査です。
家族に特定の遺伝性疾患がある場合などには、遺伝子の変異を調べることもあります。
検査の実施時期は医療機関によって幅がありますが、妊娠15~19週が多いようです。
それより前だと、胎児に障がいが生じたり流産の危険性が高くなったりするとされています。
費用は大体10~15万円となっています。
わかること
13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(ダウン症)、ターナー症候群、クラインフェルター症候群などの染色体異常が診断されます。
検査の精度は99%以上とされています。
遺伝性疾患の有無を調べることもあります。
検査方法
超音波装置で赤ちゃんの位置を確認しながら、妊婦さんのお腹に針を刺して、子宮内の羊水を20mlほど採取します。
かかる時間は、通常、数十秒から数分です。
その後、再度、超音波装置でお腹の赤ちゃんの様子に異常がないかを確認して、30分ほど安静を保ちます。
母子ともに問題がなければ、帰宅することができます。
羊水から回収された細胞は、培養されて染色されます。
顕微鏡で染色体が見える状態にして、専門の医師や技師が目で見て異常を診断していきます。
結果が出るまで、2~4週間かかるところが多いようです。
結果を早く知りたい場合は、FISH法という方法で、13番・18番・21番・性染色体の数の異常だけを迅速に診断することもできます。
この結果は、3~7日後に出している施設が多いようです。
検査のリスクと限界
破水や子宮内感染、出血などがおこり、検査のあとに流産してしまう危険性が0.3%程度あるとされています。
出血や下腹部痛がある場合は、そのまま入院となる場合もあります。娠をしても流産や死産を繰り返す不育症の妊婦さんで、アスピリン治療やヘパリン治療を受けている場合は、検査のあとに出血が止まりにくくなる恐れがあるので、一時治療を中断する必要があるので、主治医と入念に相談することが大切です。
この検査では、まれに細胞の培養がうまくいかずに結果が得られないことがあります。
また、染色体の数の異常ではなく、形の異常(転座・欠損など)に関しては、顕微鏡で見て分からないような微細なものは検出できない場合があります。
さらに、正常な細胞と染色体異常の細胞が混在するモザイク型の場合は、判断が難しいこともあります。
絨毛検査
絨毛は胎盤の一部で、母親と赤ちゃんとの間で酸素や栄養の交換が行われるところです。
絨毛の細胞の赤ちゃんの細胞も、ひとつの受精卵が細胞分裂を繰り返してできたものなので、絨毛を採取して検査することで、赤ちゃんの染色体異常や遺伝子異常の有無を診断することができます。
検査は、妊娠11~15週に行われることが多いようです。
それ以前だと胎児に障がいが生じる危険性があります。
羊水検査より早い時期に行えますが、医師の高い技術が必要で、対応している医療機関は限られています。
費用は10~15万円となっています。
わかること
基本的に羊水検査と同じで、13トリソミー・18トリソミー・21トリソミー(ダウン症)、ターナー症候群、クラインフェルター症候群などの染色体異常や遺伝性疾患の有無が診断されます。
検査方法
超音波で赤ちゃんの位置を確認しながら、絨毛を採取していきます。
妊婦さんのお腹に針を刺す「経腹法」と膣から子宮にチューブを入れる「経頸管法」があります。
お腹に針を刺す場合、局所麻酔を行う施設もあります。
採取にかかる時間は、数十秒から数分と医師によってまちまちです。
採取後、安静が必要ですが、母子ともに大きな問題がない場合は、その日のうちに帰宅できます。
絨毛を採取したあと、一般的には細胞を培養して、診断を行います。
結果が出るまでに2~3週間ほどかかります。
検査のリスクと限界
破水や子宮内感染、出血などによって、検査のあとに流産してしまう危険性が1%程度あるとされています。
また、不育症でアスピリン治療やヘパリン治療を受けている場合、検査のあとに出血が止まりにくくなる恐れがあるために、一時治療を中断する必要があります。
その間、中断のため流産する可能性もあるので、主治医と入念に相談することが重要です。
この検査では、正確には、赤ちゃんの染色体ではなく胎盤の染色体を調べています。
そのため、赤ちゃんの染色体は正常なのに、絨毛検査では正常な細胞と染色体異常のある細胞が混在してる「モザイク」という結果が出たり、まれに、細胞の培養がうまくいかない場合があったりして、追加で羊水検査が必要になることがあります。
また、小さな染色体の欠損などは、検出されない場合もあります。
母体血清マーカー
お腹の赤ちゃんに染色体異常や神経管閉鎖不全(脳や脊髄を収容する神経管の一部が欠けることによって、脳や脊髄がはみ出してしまう病気)がある場合、母親の血液中に含まれるいくつかのたんぱく質やホルモンの濃度が増えたり減ったりする傾向があることがわかっています。
このような「マーカー」となる物質のうち、αーフェトプロテイン(AFP)・ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)・非抱合性エストリオール(uE3)・インヒビンAの4つの物質を測定するのが「クアトロ検査」、AFP・hCG・uE3の3つを測定するのをが「トリプルマーカー検査」です。
検査の実施時期は、医療機関によって幅がありますが、妊娠15~18週であることが多いようです。
この検査では、異常のある確率が出るだけなので、確率が高かった場合、診断を確定するためには、その後羊水検査を受ける必要があります。
羊水検査の実施時期を考えると、母体血清マーカーは16週頃までに受けるのが望ましいとする施設もあります。
費用は大体2~3万円となっています。
わかること
赤ちゃんに18トリソミー・21トリソミー(ダウン症)や神経管閉鎖不全のある確率がわかります。
検査結果は、病気・障がいごとに「何分の1」という確率で出されます。
例えば、「1/100」という数字は、「1/100という結果であった人が100人いた場合、そのうちの1人の赤ちゃんに疾患や障がいのある可能性があり、99人の赤ちゃんには疾患や障がいはない」と解釈します。
検査の方法
妊婦さんから注射器で10ml程度の血液を採って、検査会社に送り、判定を行います。
血液の採取から結果が出るまで、10日ほどとしている施設が多いようです。
検査のリスクと限界
血液を採取するだけなので、検査による流産などのリスクはありません。
この検査は、異常の「診断」をするものではありません。
あくまでも、染色体異常を心配する人が、羊水検査を受けるかどうかを決めるための情報を提供する検査であると位置づけている施設が多いようです。
NIPT(新型出生前検査)
NIPTは正式には、「無侵襲的出生前遺伝学的検査」という名称で、母親の血液から赤ちゃんの染色体異常を調べる方法です。
子宮に針を刺さなくてよいので検査による流産の危険性もなく、「検査の精度が高い」と報道されたことによって、実施され始めた当初から大きな関心を集めました。
費用は大体15~21万円となっています。
わかること
母親の血液には、胎盤から漏れ出た赤ちゃん由来のDNAの断片が含まれていることがわかっています。
このことを利用して、赤ちゃんの染色体異常、具体的には13トリソミー・18トリソミー・21トリソミー(ダウン症)の有無を判定します。
検査結果は確率ではなく、「13トリソミー:陽性」というように、「陽性(異常あり)」「陰性」で示されます。
赤ちゃん由来のDNAは、遅くとも妊娠9週には母親の血液の中にあらわれます。
羊水検査よりも早い時期に検査が可能とされていて、臨床研究として実施している病院では10週から実施しています。
検査方法
妊婦さんから注射器で20mlの血液を採って、検査会社に送り判定を行います。
血液の採取から結果が出るまで1~2週間ほどとしている施設が多いようです。
検査のリスクと限界
採血のみなので、検査による流産などの危険はありません。
「制度が高い」と広く報道されていましたが、検査を受ける人の年齢や背景によって、その制度は大きく変わってきます。
そのため、NIPTで「陽性」という結果が出ても、それが本当に正しいかどうか確認するためには、羊水検査や絨毛検査を改めて行う必要もでてきます。
なお、結果が「陰性」と出た場合、妊婦さんの年齢にかかわらず、赤ちゃんがダウン症でない確率は99%異常とされています。
補足
日本産婦人科学会は、さまざまな懸念から、検査の対象となる人を次のような条件を満たす人に絞るべきだと指摘しています。
・以前、染色体異常(13トリソミー・18トリソミー・21トリソミーのいずれか)の子どもを妊娠した経験のある人
・高齢妊娠者(多くの施設では、35歳以上としています)
・夫婦のいずれかが、染色体異常の保因者である場合
・検査の前に、十分なカウンセリングを行う体制を整えていること。
・陽性だったときに備えて、妊婦の意向に応じて、羊水検査などを自分の施設で行えること。また、最初の検査から出産後まで、継続してカウンセリングやケアを行えること。
参考
今回記事を書く上で参考とさせていただいた著書です。
実際に出生前診断に向き合った方々の体験談、出生前診断をめぐる不安とサポート、出生前診断で悩んだときのアドバイスなどがとっても分かりやすく書かれています。
出生前診断のこと、NIPTについて詳しく説明されています。
GeneTech NIPTを取り扱っている医療機関を調べることもできます。
おわりに
今回は、高齢出産のリスク、出生前診断についてまとめました。
私が生まれた頃に比べると、現在は社会に出て働く女性が増え、結婚する年齢も上がり、高齢出産をする女性も増えています。
年齢が上がると、流産してしまう確率や赤ちゃんに障がいが出てしまう確率が増えたり、妊娠・出産時におけるお母さんの身体にも影響が出てきたりします。
出生前診断については賛否両論ありますが、私は自分のお腹の中で新しい命をはぐくむお母さんたちが、少しでも安心して出産に挑める手助けになるといいな~と思っています。
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